常習盗賊改め方ひなぎく見参! 1 新装版 (1)
桜野 みねね
桜野みねねという漫画家さんがいます。
私の好きな漫画家さんの例に漏れず、旧エニックス・ガンガン系の方で現在はマッグガーデンに在籍。過去、「まもって!守護月天」というラブコメ漫画を大ヒットさせましたが、その後、有り体に言えば創作者特有の心の病気にかかってしまい、ここしばらくは断筆中でした。そんな桜野氏がこの度、コミックBLADE MASAMUNEという隔月刊誌で、過去に描いた「ひなぎく見参!」の続編をスタートさせました。私も復活第一弾という事で、全然読んでない漫画ばかりなのに雑誌を講読しました。
一応、義賊・石川夢幻斎を追い続ける捕り方如月雛菊が主人公の和風冒険活劇…のフリしたラブコメですね(笑)。てゆーか新連載ではいきなり新キャラ登場です。鏡堂天城…明らかに悪役キャラですな。あ、ライバルというのは夢幻斎のね。何故って彼はこの作品のヒーローだから。この作品の面白い所は、ヒロインとヒーローが敵同士という関係。しかもヒーロー夢幻斎は、別人のフリして雛菊の側に居るという、「名探偵コナン」の新一と蘭よろしくの「秘密を守り徹すお約束」。この「お約束」をどう扱うかという点でも旧版「ひなぎく見参」1巻のあとがきでも作者が語っています(で、どうされたいのかはよく解りませんが・笑)。それだけならまぁなんてことはないよくある設定。で、ラブコメといやあそりゃアンタ、ヒーローとヒロインはくっついてくれなきゃ意味ないじゃーん、くっつかないならくっつかないなりに頷かせてくれなきゃ困るじゃーん、なのですが。
ただ勘違いして欲しくないのは、敵同士という関係で燃えるような恋愛感情が…!という様なチープなものではなく、雛菊以外、彼女の姉妹にはとうに夢幻斎の正体が隣人の剣だという事がバレているという構図でして、そこがこの作品のジャンルを「ラブコメ」に位置付ける土台な訳ですね。普通はヒーローとヒロインの間には恋愛感情が燃えているのに、立場が違う、という事自体が障害になって周りが揉め出したり…というのは映画なんかでもよくあるのですが、この作品はむしろ逆で、立場が違う、という外面的事実自体はさほど障害という訳でもなく、立場が違うという事と相手への想いに揺れる葛藤といった、ヒロイン・ヒーロー共に非常に内面的な部分が抽出されているんですね。周りの人間である彼女の姉や妹なんかは「YOUさっさとくっついちゃいなよ!(←ジャニーズの社長か)」みたいに、二人の仲を応援してるし(笑)。悩んでるのは当事者だけ。
実も蓋もない言い方をすれば、すれ違い(?)を重ねる王道のラブコメパターンに敵味方という立場を添えたような感じなのですが、これは展開で引っ張るタイプではなく、心情描写に自信がある方がやれる妙技といいますか、やはり才能がある方だと思いました。なモンで、しょっちゅう二人は対峙しては別れの繰り返しという展開的にはワンパターンながらも、個々のお互いに対する感情を徐々に積み重ねゆく、という「繋ぎ」も上手さを持っています。(余談ですが「繋ぎ」に関してはネタ切れブツ切り白紙化常習犯の某MK先生にも見習って欲しい所です(笑)。逆に桜野氏の病み具合はプロ失格モノなのでMK先生を見習って欲しいですが。)
なんというか、この方の感情描写って音楽で例えるならば揺らぎというかうねりというか、グルーヴ感があるんですね。派手さはないんだけど、一定のリズムで澱みなく寄せては返す波のように、素直に染み込んでくる「優しさ」がある。この「優しさ」はこの方の漫画の最大の魅力かな?と思います。
新連載第1話は夢幻斎対策課が移されるとか、結構今までにない波乱ぶりで、(姉の椿が殺された、というのはどー考えてもありえないので安心しきっているが・苦笑)内面を軸にした展開ながらも違う部分も濃くなるのかな?と気になります。
…ただ、ここまで書いておいてナンなのですが、実は彼女の作品群の中では、それほど好きでもないんだなー、「ひなぎく」(苦笑)。
まぁこれになるのは解るんですけどね。「まもって!守護月天」は、まぁ彼女らしくはあるのですが、デビュー作という事もあって、結構ベタというか大衆性をかなり意識している作りだし(いやまぁこういうベタなのも敷居が低くて好きなんですけどね)、何よりこれは色々イザコザがあったとはいえ形の上では終わらせてますからねぇ。
ヒーリング・プラネット 新装版
桜野 みねね
私のイチオシはやっぱり「Healing Planet」!
これは1巻分だけではなくてあと2,3巻見たかったですねー。シリーズものながら一話ないし二話の短編完結型の作品なので読みやすいというのもあるけど、かなり斬新な実験作だと思うんだけどなー。何て言うんでしょ?読んでて心地よい浮揚感があるんですね。主人公のさとりがこれからどんなクライエントに会い、どのように解決し、またそれがさとりに逆にどのような影響を与えるのか、…ってなんだか育成シミュレーションゲームみたいですが(笑)、もっと色々見たいんですけどねぇ〜。
まぁとりあえず今後は病まずに連載続けられる事を祈ります(笑)。